アメリカ初のアジア系大統領候補 アンドリュー・ヤン

 

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アンドリューヤン


 来年2020年にアメリカ大統領選挙をひかえる中、野党の民主党からはトランプから政権を取ろうと候補者が揃っている。まずはオバマ政権時代の副大統領ジョー・バイデン、一番有力視されていたが最近はウクライナ疑惑によって人気がいまいちである。次のバーニー・サンダーズは、前回2016年の大統領選挙でも立候補し、リベラルな若年層を中心に人気を集めた。今回の選挙でも注目を浴びていたが心臓発作によって倒れ、健康状態が心配される。そして民主党の候補者で最も人気なのが、女性初の大統領を目指すエリザベス・ウォレンだ。彼女はハーバード大学法科大学院の元教授で、主にアメリカ国内の経済的不平等について訴えている。候補者の中で、最左派と言ってもいいかもしれない。

 そして本記事で紹介するのがアンドリュー・ヤンだ。台湾出身の移民夫婦から生まれ、コロンビア大学ロースクール卒業後数か月間程弁護士を務め、その後起業家としていくつかの企業を立ち上げた。その中でも立候補するきっかけにつながったのが大学新卒のスタートアップ企業をサポートする事業であり、その事業を通してアメリカ中を周る中都市間の格差に衝撃を受け、大統領選挙へ立候補することを志した。  彼が掲げるメインの政策として「最低所得保険制度(ユニバーサル・ベイシック・インカム)」がある。これは政府が国民へ生活に必要最低限のお金を支給するという制度であり、彼自身はこれを「Freedom Dividend(自由の分配)」と呼んでいる。具体的にはアメリカ国民の全ての成人に月に1000ドル(10万円)を支給し、アメリカ経済をより活性化させることが狙いである。だがそれ以上に彼が意識しているのは、近年オートメイション(機械化)が進む中多くの労働者の職が奪われることが懸念されている。そんな失業者をユニバーサル・ベイシック・インカムによって今後サポートしていくのが目的だ。特にトラックの運転手はアメリカで最も人気の職業の1つで、自動運転技術が発達するなかトラック運転手を始めとした運送業社で働いている労働者が近々職を失う可能性が非常に高い。そうなればトラックの運転手だけで300万人以上の人が失業すると言われており、製造業などを合わせれば2030年までに2000万人の人々が同様に失業すると予想される。また運送業や製造業についている人の学歴は多くの場合高卒で、新たな仕事に就くことが難しく、社会に大きな不満を持つことは間違いない。  このような事が現実的に充分に起こり得る現代において、何か対処法を考え出す必要がある。そしてまさに彼が掲げるユニバーサル・ベイシック・インカムが機械化によって職を失う人々の助けになると主張する。これは国から1000ドルを支給することで失業者が働かなくて済むことが狙いなのではなく、新たな職を探すまでのサポートという役割だ。また失業者をサポートし生活が維持出来ることで犯罪率も低下し、外国人移民などに対するヘイトがなくなるのではないだろうか。  

 アンドリュー・ヤンの候補者としての大きな特徴の一つが、インターネット上での人気である。ツイッターやインスタグラムのみならず、人気ユーチューバーの動画にも数多く登場し、他の候補者が絶対に口にしない様なスラングや若者言葉を使いながら親しみ安さをアピールしている。熱烈な支持者によって“Yang Gang”というラップソングが作られるほどだ。2016年選挙時のトランプのスローガンが”Make America Great Again”(再びアメリカを偉大に) だったのに対し、ヤンのスローガンは”Math”(数字)である。こんなユーモアも彼の人気の理由だ。  全候補者の中で今後の機械化に備えて具体的な政策を掲げているのはアンドリュー・ヤンだけではないだろうか。機械化によって何百万人もの人が失業するのは確実であり、彼が掲げるユニバーサル・ベイシック・インカムは一つの解決策として考えていく必要がある。またネットを通して人気を得ている彼だが、このような新たな形で選挙を有利に進めることが今後政治家にとって大切になっていくのかもしれない。  支持率を数字で見れば他の候補者に負けているが、アメリカで最も人気で、最も嫌いな人が少ない候補者なのはアンドリュー・ヤンの様に思える。